建物の認定基準とは?登記できる建物の3要件と個数|土地家屋調査士試験
登記できる建物の3要件(外気分断性・定着性・用途性)を不動産登記規則111条と準則77条の例示で整理。サイロや桟橋の上の家屋など過去問の当てはめ、建物の個数の数え方、附属建物の扱いまで、土地家屋調査士試験の受験生向けに解説します。
土地家屋調査士試験の建物の分野は、「そもそも登記できる建物か」という認定の問題から始まります。建物の認定は令和4年から令和6年まで3年続けて択一で1問ずつ出題されており、確実に得点したいテーマです。
結論から言うと、登記できる建物とは、屋根と周壁などで外気と分断され(外気分断性)、土地に定着し(定着性)、目的とする用途に使える状態にある(用途性)建造物です(不動産登記規則111条)。試験では、この3要件を準則77条の例示と組み合わせて、個々の建造物に当てはめられるかが問われます。
本記事では、3要件と準則77条の例示を表で整理したうえで、過去問に出た具体例を「建物になるもの・ならないもの」に分けて確認します。後半では、何棟を何個の建物として登記するかという建物の個数と、附属建物の扱いを扱います。
登記できる建物の3要件(不動産登記規則111条)
建物の表題登記ができるのは、不動産登記規則111条の「建物」に当たるものだけです。条文は次のとおりです。
建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。(不動産登記規則111条)
この条文を3つの要件に分けると、次の表のようになります。
| 要件 | 条文の文言 | 確かめること |
|---|---|---|
| 外気分断性 | 屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し | 屋根と周壁などで外気と分断されているか |
| 定着性 | 土地に定着した建造物 | 土地に固定され、容易に動かせないものか |
| 用途性 | その目的とする用途に供し得る状態にある | 住居・店舗・倉庫などの目的に使える状態か |
3つの要件は、どれか1つでも欠けると建物になりません。逆に、見た目が「建物らしくない」ものでも、3要件を満たせば建物として登記できます。試験で狙われるのは、まさにこの「見た目と要件のずれ」です。

「これらに類するもの」と「土地に定着」の読み方
外気分断性の要件は「屋根及び周壁」に限られず、「これらに類するもの」でもよいとされています。そのため、建造物自身の屋根がなくても、高架鉄道の高架下を屋根として利用し、周壁を築造して一体化させた店舗は建物として登記できます(令和4年 第10問エ)。
定着性も、地面に直接接していることまでは求められません。海底からの脚柱で支えられた永久的な構築物である桟橋の上に建築された、屋根と周壁のある水族館は、建物として登記できます(令和4年 第10問オ)。桟橋の上の家屋について「土地に直接付着していないので建物と認定できない」とした肢は誤りです(平成24年 第16問ア)。
準則77条の例示:建物とするもの・しないもの
規則111条の要件だけでは判断に迷う建造物があるため、不動産登記事務取扱手続準則77条は具体的な例示を置いています。
建物の認定に当たっては、次の例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定するものとする。(不動産登記事務取扱手続準則77条)
例示は、建物として取り扱うもの(1号)と、建物として取り扱わないもの(2号)に分かれています。
| 建物として取り扱うもの(準則77条1号) | 建物として取り扱わないもの(準則77条2号) |
|---|---|
| 停車場の乗降場又は荷物積卸場(上屋を有する部分に限る) | ガスタンク、石油タンク又は給水タンク |
| 野球場又は競馬場の観覧席(屋根を有する部分に限る) | 機械上に建設した建造物(地上に基脚を有するものなどを除く) |
| ガード下を利用して築造した店舗・倉庫等の建造物 | 浮船を利用したもの(固定しているものを除く) |
| 地下停車場・地下駐車場・地下街の建造物 | アーケード付街路 |
| 半永久的な園芸又は農耕用の温床施設 | 容易に運搬することができる切符売場等 |
この表で特に注意したいのは、括弧書きの限定です。乗降場は「上屋を有する部分」、観覧席は「屋根を有する部分」に限って建物になります。反対に、浮船を利用したものは「固定しているもの」が、機械上の建造物は「地上に基脚を有するもの」などが、建物として取り扱わないものから除かれます。括弧書きを読み落とすと、結論が逆になります。

例示を使った過去問の当てはめ
準則77条の例示は、そのまま肢として出題されます。過去問で問われた結論を並べると次のとおりです。
| 建造物 | 結論 | 出題 |
|---|---|---|
| ガード下を利用して築造した倉庫 | 建物として登記できる | 平成24年 第16問エ、平成30年 第10問ウ |
| 競馬場の観覧席のうち屋根を有しない部分 | 登記できない | 平成30年 第10問ア |
| 土地に固定している浮船を利用した店舗 | 登記できる | 平成30年 第10問イ |
| 容易に運搬することができる切符売場 | 登記できない | 平成30年 第10問エ |
| 円柱状の大型の給水タンク | 登記できない | 令和4年 第10問イ |
| 円柱状の大型の石油備蓄用タンク | 登記できない | 令和6年 第12問オ |
| 公衆用道路上に屋根覆いを施したアーケード付街路 | 登記できない | 平成24年 第16問オ、平成27年 第13問エ |
| 屋根と周壁がガラスで覆われた半永久的な農耕用の温床施設 | 登記できる | 平成27年 第13問オ、令和4年 第10問ア |
アーケード付街路は、令和5年 第11問アで「周辺が店舗に囲まれており、かつ、アーケードを有する部分に限り、建物として登記することができる」という形で出題されました。乗降場の「上屋を有する部分に限る」に似せた限定ですが、アーケード付街路は周辺の状況にかかわらず建物として取り扱わないので、この肢は誤りです。
例示にないものは3要件に当てはめる
準則77条は「例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定する」と定めているので、例示に載っていない建造物は、3要件に当てはめて判断します。過去問では、外見の印象と結論が食い違うものが繰り返し出題されています。
建物として登記できるもの
| 建造物 | 判断のポイント | 出題 |
|---|---|---|
| 鋼管製の脚柱で土地に定着し、鉄板で外気と分断された飼料貯蔵用のサイロ | 脚柱でも定着性がある。タンクと違い、屋根・周壁に囲まれた貯蔵所として用途に供される | 令和6年 第12問イ |
| 基礎工事を施して土地に定着させ、店舗や居宅に使う廃車の鉄道車両 | もとは移動する車両でも、定着させて用途に供していれば建物 | 令和6年 第12問ウ、平成30年 第10問オ |
| 上部が倉庫として利用され、周壁で外気と分断された寺院の山門 | 門という外見でも、倉庫部分は3要件を満たす | 令和5年 第11問イ |
| 主たる部分が鉄骨で、屋根と周壁が永続性のある膜構造の特殊シートで覆われた建造物 | ビニールハウスのように見えても、永続性のある外壁があれば外気分断性がある | 令和5年 第11問ウ |
| 最上部が屋根と周壁のある展望台で、下部が鉄筋コンクリート造の階段室 | 高い位置にあっても、下部の構造で土地に定着している | 令和5年 第11問エ |
| 屋根と外壁があり、内部に回転式のパーキング機械を置いたタワー状の立体駐車場 | 「機械上に建設した建造物」ではなく、屋根と外壁のある建造物 | 令和5年 第11問オ、平成27年 第13問ウ |
| 内部に祭壇や参拝者の着席設備があり、本堂として使われている観音像 | 像の外見でも、屋内で用途に供されている | 平成27年 第13問ア |
| 開閉式円形ドーム屋根を有する野球場 | 屋根の開閉可能部分の下の観客席・フィールドも含めて建物 | 令和6年 第12問エ |
令和6年 第12問エは、観覧席の「屋根を有する部分に限る」という例示を逆手に取った肢です。「屋根の開閉可能部分の下にある観客席及びフィールド部分を除き」登記できるとしていますが、公式正解は誤りで、その部分も含めて建物として登記できます。
このほか、屋根ふき材が波形硬質塩化ビニールであることだけを理由に建物と認定できないとした肢(平成24年 第16問ウ)は誤りとされ、鉄塔の下部の建物と上部の展望台がエレベーターと階段で連絡している場合に一体として建物と認定できるとした肢(同イ)は正しいとされています。
建物として登記できないもの
| 建造物 | 判断のポイント | 出題 |
|---|---|---|
| 上屋のある駅のホーム内にある売店(基礎工事あり、周壁あり) | 建物として扱われる乗降場の上屋の下にあるもので、独立の建物として登記できない | 令和6年 第12問ア、平成27年 第13問イ |
| 鉄骨柱の土台の上に置いた、組立式で容易に移動できる事務所 | 土地に定着した建造物とはいえない | 令和4年 第10問ウ |
駅のホームの売店は、規則111条の3要件を満たしているように書かれるのが特徴です。「基礎工事が施されて」「周壁により外気と分断されて」と条件を重ねても、結論は変わりません。平成27年と令和6年に同じ型で出題されているので、結論ごと覚えてしまいましょう。
建物の個数の数え方(準則78条)
登記記録は1個の建物ごとに作られるので、何棟の建物を何個として登記するかが問題になります。建物の個数は、物理的な棟数ではなく、効用上一体として利用されているかと所有者の意思で決まります。
効用上一体として利用される状態にある数棟の建物は、所有者の意思に反しない限り、1個の建物として取り扱うものとする。(不動産登記事務取扱手続準則78条1項)
準則78条の内容を整理すると、次の表のとおりです。
| 場面 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 効用上一体として利用される数棟の建物 | 所有者の意思に反しない限り1個の建物 | 準則78条1項 |
| 一棟の建物に構造上区分され、独立して用途に供することができる部分 | 各別に1個の建物。所有者が同一なら、その意思に反しない限り一棟の全部又は隣接する数個の部分を1個にできる | 準則78条2項 |
| 数個の専有部分に通ずる廊下・階段室・エレベーター室・屋上など、構造上共用に供されるべき部分 | 各別に1個の建物として取り扱うことができない | 準則78条3項 |

個数の過去問で問われた具体例
| 事例 | 結論 | 出題 |
|---|---|---|
| 近接する2棟で、それぞれの2階に出入りするには同一の屋外階段を使うほかない | 1個の建物として取り扱われる | 令和元年 第9問ア |
| 一筆の土地上の同一所有者の3棟が、それぞれ異なる借主の居宅として使われている | 効用上一体ではないので1個にできない | 令和元年 第9問イ |
| 効用上一体として利用される状態にない近接した数棟 | 1個の建物として登記できない | 平成24年 第15問ア |
| 数個の専有部分に通ずる、区分所有者の一部の共用に供されるべき廊下 | 1個の建物として取り扱えない | 令和元年 第9問エ |
| 共用部分である旨の登記がある建物 | 1個の建物として取り扱われる | 令和元年 第9問オ |
| 物理的現況に変更がない場合 | 登記の申請によって建物の個数が増減することがある | 平成24年 第15問ウ |
令和元年 第9問エは、共用部分が区分所有者の「全員」ではなく「一部」の共用である点で、独立した建物にできるように見せています。準則78条3項は「全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分」と定めているので、一部共用でも結論は同じです。
建物の分割・区分・合併の登記をすれば、現況が変わらなくても登記上の個数は増えたり減ったりします。「個数は物理的な棟数で決まる」と考えていると、平成24年 第15問ウのような肢を落とします。
附属建物と主である建物
効用上一体として利用される数棟を1個の建物として登記するとき、中心となる建物を主である建物、ほかを附属建物と呼びます。不動産登記法2条23号は、附属建物を次のように定義しています。
附属建物 表題登記がある建物に附属する建物であって、当該表題登記がある建物と一体のものとして一個の建物として登記されるものをいう。(不動産登記法2条23号)
母屋に対する物置や車庫が典型です。附属建物にも所在・種類・構造・床面積があり、表題部に記録されます(法44条1項5号)。附属建物には符号を付けて区別します(規則112条2項)。
附属建物で問われる論点
| 論点 | 正しい結論 | 出題 |
|---|---|---|
| 効用上一体でない2棟を主である建物と附属建物にできるか | できない。距離が近いだけでは足りない | 令和6年 第14問ア |
| 主である建物に抵当権の登記があると附属建物にできないか | できる。合併の制限と混同しない | 令和元年 第9問ウ |
| 附属建物の新築の日が主である建物と同じとき | 附属建物の新築の日を申請情報とすることを要しない | 平成26年 第14問イ、令和6年 第14問エ |
| 主である建物だけが取壊しで滅失したとき | 表題部の登記の抹消ではなく、表題部の変更の登記をし、附属建物を主である建物とする | 令和2年 第13問ア |
| 附属建物を新築したときの表題部の変更の登記 | 変更後の建物図面と各階平面図、所有権を有することを証する情報を提供する | 令和6年 第14問オ、令和2年 第13問オ |
| 附属建物の種類・構造・床面積が直前の記録と同一のとき | 「同上」と略記しない | 平成30年 第14問イ |
令和元年 第9問ウは、抵当権の登記がある建物の合併の登記が制限されていることと混同させる肢です。附属建物の新築として1個の建物にすることは、抵当権の登記があっても妨げられません。合併の登記の制限と、附属建物の新築とを分けて覚えてください。
試験で問われるポイント
- 建物の3要件は、外気分断性・定着性・用途性。根拠は不動産登記規則111条
- 「屋根及び周壁又はこれらに類するもの」なので、高架下を屋根として利用した店舗も建物になる
- 定着性は地面への直接の接着を要しない。脚柱で支えられた桟橋の上の家屋や、脚柱で定着したサイロも建物
- 準則77条の例示は括弧書きまで覚える。乗降場は上屋を有する部分、観覧席は屋根を有する部分に限る。浮船は固定しているものを除く
- タンク(ガス・石油・給水)、アーケード付街路、容易に運搬できる切符売場は建物として取り扱わない
- 効用上一体の数棟は、所有者の意思に反しない限り1個の建物。効用上一体でなければ近接していても1個にできない
- 数個の専有部分に通ずる廊下・階段室などは、全員の共用でも一部の共用でも、各別に1個の建物にできない
- 主である建物に抵当権の登記があっても、附属建物の新築として1個の建物にできる
よくある引っかけ(過去問で×になった肢の型)
1. 要件を満たすように見せる型:「基礎工事が施されて」「周壁により外気と分断されて」と条件を重ね、上屋のある駅のホームの売店を建物にできるとする肢です(令和6年 第12問ア、平成27年 第13問イ)。独立の建物としては登記できません。
2. 例示の限定を広げる型:観覧席の「屋根を有する部分に限る」を使い、開閉式ドーム屋根の下の部分を除くとする肢(令和6年 第12問エ)や、アーケード付街路に「店舗に囲まれ、アーケードを有する部分に限り」と限定を付ける肢(令和5年 第11問ア)です。どちらも誤りです。
3. 外見で判断させる型:門、像、鉄道車両、桟橋の上、膜構造のシートなど、建物らしくない外見を理由に「登記できない」とする肢です。山門(令和5年 第11問イ)や桟橋の上の家屋(平成24年 第16問ア)、園芸用の温床施設(令和4年 第10問ア)は、いずれも「できない」が誤りでした。
4. 機械上の建造物と混同させる型:回転式のパーキング機械を置いたタワー状の立体駐車場を、準則77条2号の「機械上に建設した建造物」と同視して登記できないとする肢です(令和5年 第11問オ)。屋根と外壁がある以上、建物として登記できます。
5. 個数を近さや所有者で決めさせる型:「近接して建築された」「同一の所有者」「同一の土地」を並べて1個にできるとする肢です(平成24年 第15問ア、令和元年 第9問イ、令和6年 第14問ア)。基準は効用上一体として利用される状態にあるかどうかです。
6. 他の制度の制限を持ち込む型:抵当権の登記がある建物の合併の制限を、附属建物の新築に持ち込む肢です(令和元年 第9問ウ)。附属建物とすることは妨げられません。
よくある質問
コンテナを転用した店舗やトレーラーハウスは建物になりますか
3要件、とくに定着性の当てはめで決まります。基礎への固定の方法や給排水設備の状況などから、土地に定着しているかを判断します。試験では、鉄骨柱の土台の上に置いた組立式で容易に移動できる事務所が「土地に定着した建造物とはいえない」とされています(令和4年 第10問ウ)。一方、廃車の鉄道車両でも基礎工事を施して定着させれば建物になります。「もとが何か」ではなく「いまどう据え付けられているか」で考えてください。
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