土地家屋調査士法のポイント(業務・登録・懲戒)|土地家屋調査士試験
土地家屋調査士法の要点を、業務の範囲、登録と調査士会、調査士の義務、懲戒の種類と手続、調査士法人の順に整理。過去問で×になった肢の型を年度と問番号つきでまとめ、択一の1問を確実に取るための読み方を示します。
土地家屋調査士法は、午後の部の択一で毎年1問出題されます。平成22年から令和7年までの過去問では、すべての年で第20問が土地家屋調査士法の問題でした。
結論から述べます。調査士法の1問は、条文の語尾と届出先を正確に覚えれば取れる問題です。 過去問の×肢の多くは、「取り消すことができる」を「取り消さなければならない」に替える、「調査士会を経由して」を「法務局を経由して」に替える、といった言葉の入れ替えで作られています。出題範囲も、業務、登録、義務、懲戒、調査士法人の五つの柱にほぼ収まります。
この記事では、その五つの柱を条文に沿って整理し、最後に過去問で×になった肢の型をまとめます。
土地家屋調査士法の全体像
法律の目的と五つの柱
土地家屋調査士法1条は、調査士を「不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家」と位置づけています。2条は、常に品位を保持し、業務に関する法令と実務に精通して、公正かつ誠実に業務を行うことを職責として定めています。
試験で問われる範囲は、次の五つに整理できます。
| 柱 | 主な条文 | よく問われる内容 |
|---|---|---|
| 業務の範囲 | 3条、68条 | 1号〜8号の業務、ADR業務の要件 |
| 登録と調査士会 | 8条〜18条、47条〜56条 | 登録申請の経由先、登録の取消し、会則 |
| 調査士の義務 | 20条〜25条、施行規則 | 依頼に応ずる義務、秘密保持、補助者 |
| 懲戒 | 42条〜46条 | 処分の種類、通知、公告、除斥期間 |
| 調査士法人 | 26条〜41条 | 設立、代表、競業の禁止、常駐、清算 |
過去問ではどの柱が出ているか
過去16年分の第20問の論点を見ると、どの柱にも偏りなく出題されています。
| 年度 | 第20問の論点 |
|---|---|
| 平成22年 | 土地家屋調査士の登録 |
| 平成23年 | 業務を行い得ない事件 |
| 平成24年 | 土地家屋調査士会 |
| 平成25年 | 土地家屋調査士の義務 |
| 平成26年・27年 | 調査士又は調査士法人の業務 |
| 平成28年 | 筆界特定手続代理関係業務 |
| 平成29年 | 土地家屋調査士法人 |
| 平成30年 | 名簿の登録及び調査士会への入会 |
| 令和元年 | 土地家屋調査士の義務 |
| 令和2年〜7年 | 調査士・調査士法人の混合問題 |
近年は一つの論点を深く問うよりも、登録、義務、法人の肢を一問に混ぜる形が続いています。したがって、特定の分野だけを固めるのではなく、五つの柱を薄く広く押さえる学習が合っています。
調査士の業務の範囲
3条1項の8つの業務
調査士は、他人の依頼を受けて、次の事務を行うことを業とします(3条1項)。
| 号 | 業務の内容 |
|---|---|
| 1号 | 不動産の表示に関する登記に必要な土地又は家屋に関する調査又は測量 |
| 2号 | 表示に関する登記の申請手続、これに関する審査請求の手続についての代理 |
| 3号 | 上記の手続で法務局又は地方法務局に提出する書類又は電磁的記録の作成 |
| 4号 | 筆界特定の手続についての代理 |
| 5号 | 筆界特定の手続で法務局又は地方法務局に提出する書類又は電磁的記録の作成 |
| 6号 | 1号〜5号の事務についての相談 |
| 7号 | 筆界が現地で明らかでないことを原因とする紛争の民間紛争解決手続についての代理 |
| 8号 | 7号の事務についての相談 |
4号から6号(4号と5号に関する部分)をまとめて「筆界特定手続代理関係業務」と呼びます(22条の2第2項)。7号と8号は「民間紛争解決手続代理関係業務」(ADR業務)です。
ADR業務だけは要件が加わる
ADR業務は、すべての調査士が行えるわけではありません。法務大臣が指定する研修の課程を修了し、法務大臣の認定を受けた者で、調査士会の会員である調査士に限られます(3条2項)。さらに7号の代理は、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限って行えます。
筆界特定手続代理関係業務には、このような研修や認定の要件はありません。二つの業務の違いは、肢の素材になりやすいところです。
調査士でない者は業務を業とできない
調査士会に入会している調査士又は調査士法人でない者は、3条1項1号〜5号の事務とそれに関する相談を業とすることができません(68条1項)。協会や弁護士などには例外があります。調査士でない者が「土地家屋調査士」又は紛らわしい名称を用いることも禁止されています(68条3項)。
登録と土地家屋調査士会
登録は調査士会を経由して連合会に
試験に合格しても、それだけでは調査士になれません。土地家屋調査士名簿に登録を受ける必要があり、名簿は日本土地家屋調査士会連合会に備えられ、登録も連合会が行います(8条)。
| 手続 | 経由先・提出先 | 根拠 |
|---|---|---|
| 登録の申請 | 事務所を設けようとする地の調査士会を経由して連合会へ | 9条1項 |
| 登録事項の変更 | 所属する調査士会を経由して連合会へ届出 | 14条 |
| 他の管轄区域への事務所の移転 | 移転先の調査士会を経由して連合会へ変更の登録の申請 | 13条1項 |
| 業務の廃止・死亡など | 所属する(していた)調査士会を経由して連合会へ届出 | 15条2項 |
どの手続も「調査士会を経由して連合会へ」が基本です。登録の手続で、法務局を経由したり連合会に直接出したりするものはありません。登録の申請と同時に調査士会へ入会する手続をとる必要があり、入会の手続をとらない者の登録は拒否されます(10条1項1号、52条1項)。
3月処分がないときは審査請求できる
登録の申請から3月を経過しても何らの処分がされないときは、登録を拒否されたものとして、法務大臣に審査請求をすることができます(12条2項)。申請が認められたものとみなされるわけではありません。登録の拒否や取消しに不服がある場合も、法務大臣に審査請求をします(12条1項、17条)。
登録の取消しは「しなければならない」と「できる」に分かれる
登録の取消しは、連合会が必ず取り消す場合と、取り消すことができる場合に分かれます。
| 区分 | 事由 | 根拠 |
|---|---|---|
| 取り消さなければならない | 業務の廃止、死亡、資格を有しないことの判明、欠格事由に該当するに至ったとき | 15条1項 |
| 取り消すことができる | 引き続き2年以上業務を行わないとき、心身の故障により業務を行うことができないとき | 16条1項 |
この区別は、過去問で繰り返し×肢の素材になっています。刑の全部の執行が猶予されている場合も欠格事由に当たり、連合会は登録を取り消さなければなりません。

土地家屋調査士会と会則
調査士会は、法務局又は地方法務局の管轄区域ごとに、会則を定めて一個設立される法人です(47条)。会則を定め又は変更するには、原則として法務大臣の認可が要ります(49条1項)。入会金に関する規定は認可が要る側に入ります。
調査士会が会員の報酬額を定める仕組みはありません。調査士は、受任しようとするときに、あらかじめ報酬の基準を依頼者に示します(施行規則21条)。
調査士の義務
主な義務の一覧
調査士の義務は、法律と施行規則に分かれて置かれています。語尾が「しなければならない」か「努めなければならない」かが問われるので、表で区別して覚えます。
| 義務 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 依頼に応ずる義務 | 正当な事由がなければ依頼を拒めない。筆界特定の代理とその相談、ADR業務は除く | 22条 |
| 虚偽の調査・測量の禁止 | 業務に関して虚偽の調査又は測量をしてはならない | 23条 |
| 会則の遵守 | 所属する調査士会と連合会の会則を守らなければならない | 24条 |
| 秘密保持の義務 | 正当な事由がなければ業務上知った秘密を漏らしてはならない | 24条の2 |
| 研修 | 研修を受け、資質の向上を図るように努めなければならない(努力義務) | 25条1項 |
| 事務所 | 二以上の事務所を設けることができない | 施行規則18条 |
| 業務の取扱い | 他人をしてその業務を取り扱わせてはならない | 施行規則22条 |
| 補助者 | 置いたとき・置かなくなったときは所属の調査士会に届け出る | 施行規則23条 |
| 事件簿 | 連合会の定める様式で調製し、閉鎖後7年間保存する | 施行規則28条 |
秘密保持の義務は「正当な事由」で外れる
秘密保持の義務を負うのは、調査士と調査士であった者です。業務を廃止した後も義務は続きます。一方で、条文は「正当な事由がある場合でなければ」と定めているので、正当な事由があれば義務は及びません。違反した者は6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処され、告訴がなければ公訴を提起できません(71条の2)。

補助者に業務そのものは任せられない
測量の現場では補助者を置くことができます(施行規則23条1項)。しかし、補助者にさせられるのは業務の補助であり、業務そのものを取り扱わせることはできません。「正当な事由」や「やむを得ない事由」があっても、例外の規定はありません。
罰則の重さを並べる
罰則は、義務ごとに重さが違います。
| 違反した義務 | 罰則 |
|---|---|
| 虚偽の調査・測量の禁止(23条) | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(71条) |
| 秘密保持の義務(24条の2) | 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金、告訴が必要(71条の2) |
| 依頼に応ずる義務(22条) | 100万円以下の罰金(70条1項) |
2025年6月施行の刑法等の改正で懲役は拘禁刑に改められました。古い過去問で「懲役」と書かれている肢は、「拘禁刑」と読み替えます。
懲戒の種類と手続
懲戒権者は法務大臣
調査士や調査士法人が法律や命令に違反したときは、法務大臣が懲戒の処分をします(42条、43条)。2020年8月施行の改正で、懲戒権者は法務大臣になりました。それより前の過去問には、法務局又は地方法務局の長が懲戒をする前提の肢があるので、現行法で読み替えます。
個人と法人で処分の種類が違う
| 対象 | 処分の種類 | 根拠 |
|---|---|---|
| 調査士 | 戒告、2年以内の業務の停止、業務の禁止 | 42条 |
| 調査士法人 | 戒告、2年以内の業務の全部又は一部の停止、解散 | 43条1項 |
業務の「一部」の停止は、法人に対する処分にだけあります。業務の禁止の処分を受けた者は、処分の日から3年を経過するまで調査士となる資格を有しません(5条5号)。

通知から公告までの流れ
懲戒の手続は、次の順に進みます。
- 何人も、違反する事実があると思料するときは、法務大臣に通知し、適当な措置を求めることができます(44条1項)。
- 通知があったときは、法務大臣は必要な調査をしなければなりません(44条2項)。
- 戒告と業務の停止の処分をしようとするときは、聴聞を行います(44条3項)。
- 処分をしたときは、戒告であっても、遅滞なく官報で公告します(46条)。
懲戒の事由があったときから7年を経過すると、処分の手続を開始できません(45条の2)。
調査士会の注意勧告とは別の仕組み
懲戒の手前で、調査士会が会員に働きかける仕組みもあります。会員が違反するおそれがあると認めるときは、調査士会は会則の定めるところにより注意勧告ができます(56条)。注意勧告をしたときは法務局又は地方法務局の長に報告しますが、公表する定めはありません(施行規則39条)。会員が違反すると思料するときは、調査士会は法務大臣に報告しなければなりません(55条)。
調査士法人
設立と調査士会への入会
調査士は、調査士の業務を行うことを目的として、土地家屋調査士法人を設立できます(26条)。2020年8月施行の改正で、社員となろうとする調査士が1人でも設立できるようになりました(31条1項)。法人は成立の時に主たる事務所の所在地の調査士会の会員となり(53条1項)、成立の届出は会員となる要件ではありません。
社員に関する主な規定
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 業務の執行 | 社員はすべて業務を執行する権利を有し、義務を負う | 35条1項 |
| 代表 | 社員は各自法人を代表する。定款又は総社員の同意で代表社員を定められる | 35条の2 |
| 責任 | 法人の財産で債務を完済できないときは、各社員が連帯して弁済の責任を負う | 35条の3 |
| 常駐 | すべての事務所に、その地の調査士会の会員である社員を常駐させる | 36条 |
| 競業の禁止 | 総社員の同意があっても、法人の業務の範囲に属する業務を自己又は第三者のために行えない | 37条1項 |
| 法定脱退 | 登録の取消しなどにより当然に脱退する | 38条 |
解散と清算
法人の解散及び清算は、裁判所の監督に属します(39条の3)。清算人は調査士でなければなりません(39条3項)。法務局の監督と取り違えた肢や、清算人は調査士でなくてよいとする肢が出ています。
試験で問われるポイント
過去問で×になった肢の型
過去問の×肢は、次の型に分けられます。同じ型が年度を変えて繰り返し出ているのが特徴です。
| ×肢の型 | 誤りの中身 | 出題例 |
|---|---|---|
| 経由先の入れ替え | 登録申請書を法務局又は地方法務局を経由して提出するとした | 平成22年 第20問ア、令和3年 第20問イ、令和6年 第20問イ |
| 「できる」と「しなければならない」の入れ替え | 2年以上業務を行わないときや心身の故障を、必ず取り消す事由とした | 平成30年 第20問ア、令和5年 第20問イ、令和7年 第20問オ |
| 例外を消す | 正当な事由があっても秘密を漏らしてはならないとした | 令和元年 第20問エ、令和6年 第20問ウ |
| 例外を足す | 正当な事由ややむを得ない事由があれば補助者に業務を取り扱わせられるとした | 平成27年 第20問エ、令和2年 第20問オ、令和6年 第20問エ |
| 届出先の入れ替え | 補助者を置いたときの届出先を法務局又は地方法務局の長とした | 平成27年 第20問オ、令和3年 第20問ウ |
| 義務の強さの入れ替え | 会則を「守るように努めなければならない」とした | 令和元年 第20問ウ |
| 会社法からの類推 | 総社員の同意があれば社員が競業できるとした | 平成28年 第20問イ |
| 方法を一つに絞る | 代表社員は定款の定めによらなければ定められないとした | 令和5年 第20問ウ |
| 個人と法人の混同 | 法人に対して業務の一部に限った停止は命じられないとした | 令和5年 第20問オ |
| 監督機関の入れ替え | 法人の解散及び清算を法務局又は地方法務局の長の監督とした | 令和3年 第20問ア |
| 手続を足す | 連合会に届け出れば複数の都道府県に事務所を設置できるとした | 令和7年 第20問ウ |
正しい肢として出たもの
×肢と対になる正しい肢も確認しておきます。戒告の処分をしたときも官報で公告する(令和5年 第20問エ)、法人の社員は総社員の同意があっても競業できない(令和4年 第20問エ)、筆界特定の代理業務の依頼は正当な事由がなくても拒める(令和6年 第20問ア)などです。
法改正で結論が変わった肢に注意する
古い過去問を解くときは、改正前の前提で作られた肢に注意が必要です。平成29年 第20問オの「社員となろうとする調査士が1人で設立できる」は、出題当時は誤りとされましたが、現行法では正しい肢です。懲戒権者や拘禁刑の読み替えも同じで、古い肢をそのまま覚えると本番で逆の判断をしてしまいます。
まとめ
土地家屋調査士法の1問は、出題範囲が限られ、同じ型の×肢が繰り返されるので、得点源にしやすい科目です。押さえるべき点は次の三つです。
- 経由先と届出先を正確に覚えます。登録の手続は「調査士会を経由して連合会へ」、補助者の届出は「所属の調査士会へ」です。
- 語尾の強さを区別します。「取り消さなければならない」と「取り消すことができる」、「守らなければならない」と「努めなければならない」が典型です。
- 個人と法人の違いを表で整理します。事務所の数、懲戒の種類、代表と競業の規定が問われます。
条文の数は多くありませんが、肢の言葉は細かく入れ替えられます。過去問を肢ごとに解き、×になった肢がどの型に当たるかを確かめながら進めると、短い時間で仕上げられます。
科目を選び、肢別演習で知識を確かめられます。