土地家屋調査士試験の全体像と勉強の順番|独学の進め方
土地家屋調査士試験の全体像を、筆記試験と口述試験の構成、午前の部の免除、午後の部の択一の科目別の比重から整理。独学で不動産登記法、民法、調査士法、記述式の順に進める理由と、過去問の肢別演習の回し方を解説します。
土地家屋調査士試験の勉強を始めるとき、最初に迷うのは「何から手を付けるか」です。測量、民法、不動産登記法、図面の作成と、範囲が広く見えるからです。
結論から述べます。午後の部の択一は、20問のうち16問が不動産登記法です。 平成22年から令和7年までの過去問では、すべての年で第1問から第3問が民法、第4問から第19問が不動産登記法、第20問が土地家屋調査士法でした。独学では、この配分に合わせて不動産登記法の択一から始め、民法、調査士法と広げ、最後に記述式に進むのが無理のない順番です。
この記事では、試験の構成と午前の部の免除を条文に沿って確認し、科目ごとの比重、勉強の順番、過去問の肢別演習の回し方を順に説明します。
試験の構成
筆記試験と口述試験
土地家屋調査士試験の骨組みは、土地家屋調査士法6条に定められています。法務大臣が毎年1回以上行い、筆記と口述の方法で実施されます。
| 区分 | 試験の内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 筆記試験 | 不動産の表示に関する登記に必要な「土地及び家屋の調査及び測量」に関する知識及び技能 | 6条3項1号 |
| 筆記試験 | 不動産の表示に関する登記に必要な「申請手続及び審査請求の手続」に関する知識及び技能 | 6条3項2号 |
| 口述試験 | 筆記試験の合格者について、申請手続及び審査請求の手続に関する知識 | 6条4項 |
筆記試験は、法務省の公表でも午前の部と午後の部に分けて扱われています。調査及び測量の部分が午前の部、申請手続の部分が午後の部にあたります。
午後の部は択一と記述式
受験生の多くが取り組むのは午後の部です。午後の部には、民法、不動産登記法、土地家屋調査士法の択一式の問題と、実際の登記申請を想定して申請書や図面を作る記述式の問題があります。
択一式の内訳は、過去16年分で一度も変わっていません。
| 問番号 | 科目 | 問題数 |
|---|---|---|
| 第1問〜第3問 | 民法 | 3問 |
| 第4問〜第19問 | 不動産登記法 | 16問 |
| 第20問 | 土地家屋調査士法 | 1問 |
試験時間と配点は受験案内で確かめる
試験時間、記述式の問題数、配点、基準点は、法務省が年度ごとに公表する受験案内書と結果の資料で確認してください。この記事を書いた時点では、それらの資料を直接確かめられなかったため、数値は載せていません。受験する年度の受験案内書を必ず読んでから計画を立てることをすすめます。
午前の部の免除
免除を受けられる人
土地家屋調査士法6条5項は、申請により筆記試験の一部又は全部を免除する場合を定めています。
| 対象となる人 | 免除される試験 | 根拠 |
|---|---|---|
| 測量士若しくは測量士補又は一級建築士若しくは二級建築士となる資格を有する者 | 調査及び測量に関する筆記試験(午前の部) | 6条5項1号 |
| 筆記試験に合格した者 | 次回の筆記試験、その後の試験の調査及び測量に関する筆記試験 | 6条5項2号 |
| 調査及び測量の筆記試験に合格した者と同等以上の知識及び技能があると法務大臣が認定した者 | その後の試験の調査及び測量に関する筆記試験 | 6条5項3号 |
条文の書き方は「資格を有する者」です。測量士補などの資格を持っていれば、申請によって午前の部を受けずに済みます。
午前の部を受けるか、免除を使うか
独学の計画は、午前の部をどう扱うかで大きく変わります。考え方は二つです。
| 方針 | 内容 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 免除を使う | 測量士補などの資格で午前の部を免除し、午後の部に集中する | 測量の学習を別の試験で先に済ませたい人 |
| 午前の部も受ける | 調査・測量の筆記試験も含めて受験する | 測量の知識をこの試験の中で身につけたい人 |
どちらを選んでも、午後の部の学習内容は同じです。免除を使う場合は、資格の取得と調査士試験の受験の時期が重ならないように、年単位で計画を組んでください。
科目ごとの比重
不動産登記法が中心になる
午後の部の択一は、20問中16問が不動産登記法です。記述式も表示に関する登記の申請を素材にするので、不動産登記法の知識は択一と記述式の両方で点になります。
過去16年分の不動産登記法の問題を、問題ごとの主題で数えると、次の論点が繰り返し出ています(主題の名前が完全に一致するものだけを数えています。「土地の分筆の登記」のように名前が少し違う問題は含めていません)。
| 問題の主題 | 出題数(平成22年〜令和7年) |
|---|---|
| 筆界特定 | 10問 |
| 地目 | 7問 |
| 分筆の登記 | 6問 |
| 建物の表示に関する登記の添付情報、建物の認定、建物図面及び各階平面図、建物の滅失の登記、合筆の登記 | 各5問 |
筆界特定は、土地家屋調査士が代理人として関わる手続です。不動産登記法の択一と調査士法の業務の両方に出てくるので、早い段階で押さえておくと効率がよくなります。
民法と調査士法は少ないが落とせない
民法は3問、調査士法は1問です。問題数は少ないものの、どちらも択一の得点の一部なので捨てられません。
民法では、占有権、物権的請求権、意思表示、遺言、共有がそれぞれ3回ずつ出ています。相続、代理、相隣関係、行為能力も繰り返し出ています。不動産の権利と相続に関わる分野が中心で、民法全体を均等に学ぶ必要はありません。
調査士法は毎年第20問の1問です。業務、登録、義務、懲戒、調査士法人の五つの柱から出題され、同じ型の×肢が繰り返されます。範囲が狭いので、短い期間で得点源にできます。
独学での勉強の順番
全体の流れ
独学では、次の順に進めます。
| 順番 | 学習内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 1 | 不動産登記法の択一 | 表示に関する登記の全体像をつかみ、記述式の土台を作る |
| 2 | 民法の択一 | 所有権、共有、相続など登記の前提になる権利関係を押さえる |
| 3 | 土地家屋調査士法の択一 | 範囲の狭い科目を短期間で仕上げる |
| 4 | 記述式 | 択一で身につけた知識を、申請書と図面の形で使えるようにする |
1. 不動産登記法の択一から始める理由
最初に不動産登記法を選ぶ理由は二つあります。
一つ目は比重です。択一の8割を占める科目を最初に学べば、学習の初期から得点に直結します。
二つ目は記述式とのつながりです。記述式では、どの登記を、誰が、どの添付情報をつけて申請するかを判断します。その判断の材料は、すべて不動産登記法の知識です。択一で分筆、合筆、地目の変更、建物の表題登記などの手続を一通り学んでおくと、記述式に入ったときに問題文の事実から申請の形を組み立てられます。
2. 民法は登記に関わる分野に絞る
不動産登記法を一周したら、民法に進みます。不動産登記法を学ぶと、表題部所有者、相続人による申請、共有者の一人による申請など、民法の知識を前提にする場面が多いことに気づきます。その段階で民法を学ぶと、条文の意味が具体的な登記の場面と結びつきます。
出題の中心は、物権、共有、相続、意思表示、代理、行為能力です。過去問で出ている分野から先に押さえ、それ以外は後回しにします。
3. 調査士法は短期間で仕上げる
調査士法は条文の数が少なく、出題の型もはっきりしています。登録の経由先、登録の取消しの「しなければならない」と「できる」の区別、補助者の届出先、懲戒の種類など、押さえる点は限られます。不動産登記法と民法がある程度固まった段階で、まとめて仕上げるのが効率的です。
4. 記述式は択一の知識が固まってから
記述式は、択一の知識を使って申請書や図面を作る問題です。知識が不確かなまま記述式を解くと、どこで間違えたのかを判断できません。択一で不動産登記法を一周し、主な手続の要件と添付情報を言えるようになってから記述式に進みます。
記述式に入った後も、択一の演習は続けます。記述式で迷った論点を択一の過去問で確かめ直すと、両方の精度が上がります。
過去問の肢別演習の回し方
肢の単位で解く理由
択一の過去問は、5肢を組み合わせた形で出題されます。過去16年分の午後の部の択一は320問、肢の数にすると1,600肢になります。
| 科目 | 過去16年分の問題数 | 肢の数 |
|---|---|---|
| 民法 | 48問 | 240肢 |
| 不動産登記法 | 256問 | 1,280肢 |
| 土地家屋調査士法 | 16問 | 80肢 |
組み合わせ問題では、5肢のうち2肢がわかれば正解できることがあります。しかし、それでは残りの肢の知識が不確かなまま残ります。肢別演習では、1肢ずつ正誤を判断するので、判断できない肢がそのまま見えます。
1周目は解説を読むことに時間を使う
1周目は、正答率を気にせずに進めます。肢を一つ解いたら、正誤だけでなく、解説の根拠となる条文や規則を確かめます。この段階のねらいは、論点の地図を作ることです。
2周目からは×の理由を分類する
2周目からは、間違えた肢の理由を分類します。
| 間違えた理由 | 対処 |
|---|---|
| 知識がなかった | テキストと条文に戻り、その論点を学び直す |
| 似た規定と混同した | 対比表を作る(例: 登録の取消しの「しなければならない」と「できる」) |
| 肢の言葉を読み落とした | 正誤を分けた語に印を付け、次の周回で確かめる |
調査士法の過去問では、「取り消すことができる」を「取り消さなければならない」に替えた肢が、平成30年 第20問ア、令和5年 第20問イ、令和7年 第20問オと繰り返し出ています。こうした入れ替えの型を一度分類しておくと、別の年度の肢でもすぐに気づけます。
1周の日数を決めて回す
肢別演習は、1日に解く肢の数よりも、1周を何日で終えるかで管理します。1周に時間がかかりすぎると、最初に解いた肢を忘れたころに2周目が来るからです。不動産登記法の肢は数が多いので、科目ごとに1周の日数を決め、その日数で回し切れる量を1日に割り振ります。
古い過去問は現行法で読み替える
古い年度の過去問には、その後の法改正で結論が変わった肢があります。たとえば調査士法人は、2020年8月施行の改正で社員が1人でも設立できるようになりました。改正前の過去問で「1人では設立できない」とされた肢は、現行法では結論が逆です。解説で現行法の扱いを確かめてから覚えてください。
まとめ
土地家屋調査士試験の独学は、試験の構成を知ることから始まります。押さえておきたい点は次の四つです。
- 筆記試験は二つの部分に分かれます。 調査及び測量の部分は、測量士補などの資格で免除を受けられます。
- 午後の部の択一は不動産登記法が16問です。 勉強は不動産登記法の択一から始めます。
- 民法と調査士法は範囲を絞ります。 民法は登記に関わる分野、調査士法は五つの柱に集中します。
- 記述式は択一の知識が固まってから始めます。 始めた後も択一の肢別演習は続けます。
試験時間や配点は年度ごとの受験案内書で確かめ、そのうえで1年間の計画を組んでください。
科目を選び、肢別演習で知識を確かめられます。